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人工授精

人工授精

人工授精は、自然な性交によらず、パートナーの精液を安全な専用液および精子洗浄液にて洗浄・濃縮(0.5ml)した後、子宮内に細く柔らかい管(カテーテル)により注入する医療技術です。

Q どういう場合におこないますか?

A 以下の場合に適応となります。

  1. 軽~中等度に精子数が少ない、運動率が良くない方(調整前総運動精子数100万以下ではキャンセルとなります)
  2. 性交障害のある方、なんらかの原因で性交そのものをしないご夫婦
  3. フーナー検査の結果がよくない方、ただし抗精子抗体が強陽性でない方
  4. 一般的な検査で不妊原因が見出せない方(原因不明不妊症、unexplained infertilityなどと呼びます)
  5. 体外受精を予定するも卵胞数が少なかった場合、採卵当日排卵済みだった場合
  6. タイミング療法にて妊娠に至らない場合(タイミング療法は3~8周期がめど。最長12周期としています)

Q 妊娠率はどのくらいですか?

A 1回の妊娠率は5-10%、累積で20-25%の生児獲得率です。(ゆえに妊娠しないのは人工授精のどこかがおかしいと詮索のしすぎは賢明ではありません)(参考:まったく問題のない20代のカップルが排卵日に向けて性交渉して妊娠する率は30%、原因不明不妊症35歳女性の自然周期タイミング療法での妊娠率は2-5%程度です。不妊症の方の場合、タイミングに比べ、人工授精は約2倍の妊娠率になるとお考えください。)

  1. 女性の年齢 40歳以上では特段の理由が無い限り人工授精を繰り返すのではなくART治療を早くに行うべきと考えます。43歳以上では1%未満の生児獲得率となります。また後述する自然周期や卵巣刺激周期での卵胞発育や排卵においても予想できない振る舞いを卵巣がみせることも多くなりがちです。
  2. 人工授精で妊娠される方の70%が3回目までに妊娠となります。(7回目以降の妊娠率は極端に低下するため、6回までを目安としています。人工授精での妊娠歴のある方は9回まで)38歳以上やAMHの低い方は早めのステップアップをお考えください。
  3. 排卵誘発剤併用の有無 自然周期4%、クロミフェン周期7-8%、レトロゾール周期10-12%、FSH周期14-18% 1個の排卵でもこの順で妊娠率が高まります。多胎率は自然≦レトロゾール<クロミフェン<<FSHとなります。なおレトロゾールやクロミフェンにFSHを併用した場合、複数個の卵胞が排卵すると、妊娠率と多胎率はFSH単独周期に近づきます。(参考:レトロゾールは適応外使用です。FSHは自己注射を推奨しています)
  4. 子宮内膜症や卵管の障害が合併していると妊娠率は低下します。

Q 当日の費用はいくらかかりますか? (予告なく変更されることがあります)

A おおよそ20,000円くらいです(パートナーが初診の場合や、精子正常形態分析を加えると以下加算されます)

自費16,720円(抗生剤(自費480円)処方込み)(午後・日祝日18,880円) 予告なく変更する場合があります。ご了承ください。
+GnRHアゴニスト点鼻薬使用の場合 HCG1,500注射(自費760円)+(まれですがエストラーナテープ2枚ずつ隔日5回貼付(自費2,200円)併用)+パートナー保険再診料380円(初診850円)+精液検査310円(当院で初回検査の場合、さらに正常形態分析自費3,000円が加算されます)

Q 禁欲期間や人工授精後の性交渉について注意することはありますか?

A 人工授精を予定するにあたって禁欲は必要ありません。人工授精の2~3日前に性交渉しておくと、もっとも妊娠率が高いという報告があります。ただし男性によっては禁欲期間が短いと当日の精子数が減少することがありますが、妊娠率には影響しません。7日以上射精していないと精液量、精子数も一見増えますが、逆に精子の質が極端に低下(DNAフラグメンテーション)するのでご注意ください。2~7日間禁欲するように記載された書もありますが、それはWHOマニュアルに沿った精子の評価のための禁欲です。また人工授精の当日の性交渉も問題ありません。

Q 当日のスケジュールはどうなりますか?

A パートナーが採取して2~3時間以内に持参いただきます。検体をお預かりして処理に約60分(メンズルームご使用の場合は約90分)かかります。ご本人と検体の厳格なダブルチェックがあります。処理後、精子の検査結果を報告、超音波検査にひきつづき、子宮内に精子濃縮液を約15秒かけて注入します。当日排卵済みであっても妊娠率には影響しません。特に痛みなどの苦痛はありません。約3分間安静となります。その間に、後述の注射や薬の服用指導、注意事項、次回の外来受診の予約の説明があります。

Q 人工授精の日程はどう決めるのですか?

A 自然周期や卵巣刺激周期で異なります。超音波検査により卵胞発育の数と大きさ、内膜の厚みを観察します。
また尿のLHホルモン検査(以下LHチェック)を併用することがあります。まれですが血液によるホルモン検査結果を参考にする場合があります。受診される際、ご本人とパートナーの方の向こう2~3日以内のスケジュールをあらかじめ確認しておきましょう。なお排卵日が人工授精の翌日になってもそれなりに効果は期待できます。

1.自然周期、もしくは排卵誘発(クロミフェン、レトロゾール)周期

成熟卵胞(自然周期およびレトロゾール周期では16mm、クロミフェン周期では18mmを基準としますが、内膜の厚みが不十分の場合はそれぞれ18㎜、20㎜以上を基準)と判断された場合、GnRHアゴニスト点鼻薬を用い、卵胞の最終成熟刺激(人工的にLHサージをおこす)をします。LHチェックが陰性か極薄い場合には、人工授精の約36時間前にGnRHアゴニスト点鼻薬を行います。診察後早めにGnRHアゴニスト点鼻薬を行い翌日人工授精とする場合があります。朝LH強陽性の場合、当日に人工授精を組む場合があります。卵胞の発育が遅れる場合(14日目でもまだ15㎜以下など)は卵胞の大きさがまだ小さいうちにLHサージが出現し排卵してしまうことがありますので注意が必要です。なおクロミフェンはLHサージの出現を遅らせる効果をもっていますので、通常月経15日目までは LHチェックしないことが多いです。超音波検査にて排卵を確認する(日本以外の国では行われない診療です)ことは必要ないと考えます。黄体化しても排卵しない(LUFS:黄体化未破裂卵胞)ことによる不成功周期もあるとの報告もありますが、毎回繰り返すのではなく、総じて人工授精治療の質の向上には繋がりません。

2.FSH(HMG)周期

成熟卵胞(18㎜以上を基準)と判断された場合、GnRHアゴニスト点鼻薬もしくはHCG5,000単位注射を用い、卵胞の最終成熟刺激とします。排卵まで日数がかかる場合など血液検査でのホルモンチェックや尿LHチェックも参考にすることがあります。排卵確認および副作用の有無のチェックを数日後に行います。

Q HCG注射5,000単位注射する場合とGnRHアゴニスト点鼻薬をする場合とでなにがどう違うのでしょう?

A 卵胞の最終成熟を促し排卵にもっていく力はそれほど変わりませんが、GnRHアゴニスト点鼻薬が効かない方がおられます(脳下垂体が反応しない、点鼻の失敗、強い鼻炎の方など)のでHCG注射の方がわずかに優れます。黄体機能を高める力もHCG5,000単位注射の方がより強いですが、GnRHアゴニスト点鼻薬使用の場合、人工授精当日などのHCG1,500単位注射や黄体ホルモン剤内服で十分にカバーできます。GnRHアゴニスト点鼻薬の方が優れている点は三つあげられます。①排卵するタイミングを人工授精時刻により近づけられること、②卵巣が過剰に腫れる副作用(卵巣過剰刺激症候群)の頻度と程度を低下させられること、またそれと関連して次周期に遺残卵胞(HCG注射により中途半端に成長していた卵胞を排卵することなく大きく膨らませてしまう、いずれは消失してしまうが)を残しにくい、③GnRHアゴニスト点鼻薬によるLHサージは自然に発来するのと同様、FSHサージも発現させる(卵胞・卵子成熟になんらかの良い作用があるものと考えられています)。

Q 人工授精終了後の注意はなにかありますか?

A 当日の安静の必要はなく、運動、入浴、性交もかまいません。腹部の不快感ときには腹痛を伴う(とくに卵巣刺激周期)ことがありますが、軽い程度ならば心配ありません。精子を洗浄除菌しますが、消毒滅菌しているわけではありません。0.1%で軽い骨盤腹膜炎(卵巣卵管などの炎症)を起こすことがあります。風邪など症状がなく38度以上発熱が生じた場合はご連絡受診ください。強い腹痛や腹部不快感などがある場合には再診(一般不妊・不育)でご予約ください。

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